「定期所有権」という選択
先日、路線価が発表されましたが、一部を除いて全国的に資産デフレは続いています。もし、土地を50年間無料で独占的に利用できる権利が地価の半額で買えるとすれば、所有権にこだわる必要はないのではないでしょうか?最近になって、「定期所有権」という発想での土地取引が登場する環境が整ってきたようです。
(龍前 篤司, 8/3)
8月1日に国税庁は全国の今年の路線価を一斉に発表しました。それによると、東京都以外は13年連続で下落しています。新聞報道では「下げ止まり鮮明に!」なんて文字が躍っていますが、今後の「人口減少時代の到来」を考えると、ほんの一部の勝ち組地域以外の土地については、これからも「地価は下落し続ける」ことは、ほぼ明らかと言えます。そのような状況にも拘らず、消費税や所得税や社会保険料の負担は増えることは明らかなのですから、この資産デフレとどう付き合うかはとても重要な問題です。
地価の下落が予想される中で、現在のマンションブームや建売ブームに乗って、「土地の所有権を取得する」という行為はとてもハイリスクな行為であると言えます。しかし、多くの人が長期ローンを組んでこの地価下落リスクに長期間拘束される道を選択しています。
もし、50年間以上という長い期間にわたって所有権と全く同じく固定資産税の負担だけで独占的に利用できる権利(「定期所有権」)が所有権の半分の値段で取得できたらどうでしょうか?所有権であれば30坪の土地しか購入できませんが定期所有権であれば同じ予算で60坪購入できます。あるいは、土地に振り分けていた資金を建物や他の資金にまわす事もできます。
日本の旧来の借地制度が「法定更新」という制度によって、健全な借地人と地主の関係が歪められてしまい、「双方にとって不幸な関係」を打破するために平成4年にデビューしたのが「定期借地権」でした。
そして、この新しい借地制度は、土地利用の新しいスタイルとして普及することが期待されたのですが、定期借地権の利用はロードサイドについての「事業用定期借地権」は別にして、マンションも一戸建ても所有権分譲が圧倒的多数派を占めています。
この定期借地権制度が思ったほど利用されなかったのは、利回りや節税効果の問題もありますが、この制度のデビューが「設定時の保証金とそれ以降の毎月の地代」という借地契約(保証金方式)でスタートしたため、
(1)地主と借地人の双方にとって、地代のやり取りや改定という面倒な関係が継続する。
(2)地主にとっては一時に巨額な資金が取得できない(保証金を預かっても返さなければならない)。
(3)将来の地代が不安定なため、地主・借地人の双方にとって利用しづらい
という点が大きな原因だったわけです。
この「保証金+継続地代」という方式に今年から変化が生じました。そのきっかけは今年1月に国税当局から発表された「50年間の地代を一括して前受けしても、一括には課税せずに期間の経過と伴に1年間分(1/50ずつ)を不動産収入に計上すればよい」という取り扱いが公表されたことです。この「契約期間の全地代を一括して授受する方式」が普及すれば、地主は将来の地代の滞納や保証金の返還に悩まされなくなり、借地人は将来の地代の支払いに悩む必要がなくなります。
しかし、この「地代を前払いする方式」を採ったとしても、地代を前払いしているだけですから、社会情勢の変化によって地代が著しく不相当になれば地代改定の問題は理論上生じることになります。しかも、借地人にとって地代を前払いするメリットがあまりありません。
そこで、いっそのことなら所有権価格の半分以上を支払って、「無償で50年以上独占的にその土地を使用する地上権を設定する方式(「定期所有権方式」)」による定期借地権であれば
| (1) |
借地人は将来の負担増を気にせず、安心して利用できる。ローンの設定や転売も自由となる。 |
| (2) |
地主は土地を売却することなく、地価の半分以上を取得でき、しかも不動産所得課税ではなく譲渡所得課税であるため、20%の分離課税で資金を自由に使えます。 |
このように、健全な借地・地主関係の普及のためには「わずらわしい継続地代の関係」から脱却して、「定期所有権方式」による定期借地制度の普及が望まれるところなのではないでしょうか。
私は「地代一括前払い方式」の登場は、「定期所有権時代の幕」を開ける役割を果たすのではないかと期待しています。
人口が減少し、負担が増える時代が到来しようとしているのですから、借地人は定期所有権を買うことにより所有権者と全く同じように借地期間中自由に使用でき、地主は50年間の収益を最初に一括して受領してしまうことにより、土地を売却せずに資金化できます。
そして、その地域は広い区画の土地利用によって良好な環境が保たれるとなれば、「借地人、地主、地域の三方よし」の資産活用になるわけです。
新しい時代の到来は、きっと新しい土地利用制度を育むことになるはずです。「定期所有権」が普及する必然性が整ってきました。
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