人口減少社会のビジネスチャンス
人口が減少する時代においては当然経済も縮小すると考えがちですが、人口減少時代こそビジネスチャンスがあると「人口減少逆転ビジネス」の著者、古田隆彦氏(現代社会研究所所長)は言っています。
(龍前 篤司, 8/22)
SAPIOの8月10日号に古田隆彦氏が書いた面白い記事が出ていたので紹介します。
日本の人口は2006年をピークに減少し続けることは明らかなのですが、古田氏によれば一概に悲観することはないといいます。
なぜなら、人口が減少すると生活財やサービスの需要は減少するが、消費の縮小は付加価値に高い商品を創造し、新たな需要を生み出すことで未然に防止できるからです。また、労働力そのものの減少も懸念されますが、これもロボットやコンピュータの活用によって十分補完できるというのです。
そして今後、日本経済が「ゼロ成長」さえ維持することができれば、一人当たりに分配される富はより大きくなるので、国民の生活は確実に豊になれるはずだといいます。すなわち、社会が飽和に達し、人口が減少していく一方で、富は一人ひとりにより濃く蓄積されていく「飽和・濃縮型社会」の実現が期待できるからです。
そして今後、日本経済が「ゼロ成長」さえ維持することができれば、一人当たりに分配される富はより大きくなるので、国民の生活は確実に豊になれるはずだといいます。すなわち、社会が飽和に達し、人口が減少していく一方で、富は一人ひとりにより濃く蓄積されていく「飽和・濃縮型社会」の実現が期待できるからです。
それでは「飽和・濃縮型社会」に向け、勝ち残る秘訣は何でしょうか?現在、元気な企業や業界を分析してみると、その戦略が見えてきます。古田氏はその秘訣として以下の3点をあげています。
<多価値化>
既存の商品をカスタマイズ化することなどで価値を高めること。当然価格も高くなりますが、それに見合う高い品質を提供することで顧客を確保するという戦略。例えば食品スーパーの「しずてつストアー」は、沖縄産完熟マンゴーなどの各地の名産品や特産品を揃えたうえに、店内のインテリアを全てフローリングで統一し、商品と店の高級感の演出により5年間で売り上げを倍増しています。
<多数化>
一人のユーザーにできるだけ多くの商品を買ってもらったり、リピーター化してもらうことを指します。来場者をゲスト(共演者)、従業員をキャスト(出演者)と位置づけ、キャストとゲストのコミュニケーションそのものを魅力的に演出することで、毎年1600万人以上の顧客を集めている「東京ディズニーランド」はこの戦略を最も見事に体現しているといえます。
<多層化>
従来の顧客に加えて、新たなユーザーを獲得する戦略。この典型例は一番初めに少子化の波にさらされた「ベビー業界」です。子供の数は1980年の158万人から2000年には119万人まで減少しているにも拘らず、ベビーフード業界の市場規模は70億円から300億円へと成長しています。この成長の最大の理由は、高齢者を新たな客層として獲得したからなのです。すなわち、商品の味を良くしたことと、「赤ちゃんも食べられるくらいに安全な食品だから高齢者も安心して食べられる」という販売戦略が功を奏したわけです。高齢者向け紙おむつやベビーオイルなども同じことが言えます。
以上の3つの戦略は市場が縮小していく「飽和・濃縮型社会」にとって最も基本的な対応といえますが、以上の戦略や工夫は既存の商品やシステムを新しい社会に対応するように改善・改良するための処方に過ぎません。縮小する市場に対応していくためには、全く新たな市場を切り拓く努力も不可欠となります。
古田氏は、新たな市場開拓の例として携帯電話の市場拡大の原因を以下のように分析しています。
携帯電話がこれだけ急速に普及し、今後も市場規模を拡大していけるのは携帯電話を単なるコミュニケーションツールとして捉えるのではなく、ゲーム機、手帳機能だけでなく、GPSや財布機能まで搭載し、携帯電話が使う人によって財布や地図、時計、カメラ、ゲーム機にもなるからです。つまり、「ちょっと使い方を覚えたり、工夫したりするだけで、本来の機能や目的以外の分野でも活用できる」という特徴こそが携帯市場の成長の原動力なのです。
最近、小さな仕切りを作ることにより、冷蔵庫を「金庫」や「化粧箱」、「生ごみ入れ」に活用できる単身用冷蔵庫が売り上げを伸ばしているようです。これも携帯電話と同じくそのものの本来の用途から広げることにより新たな需要を生み出す手法です。
過去を振り返ってみると、日本は何度も人口減少社会を体験していますが、人口減少社会においてこそ文化は成熟し、生活は豊になっているようです。浮世絵が生まれ、藩校や寺子屋によって識字率が向上したのは人口が減り続けた江戸時代中期だったのです。単なる印鑑入れであった印籠が、芸術品として昇華し、もてはやされるようになったのもこの頃なのです。
古田氏のこの記事を読んで思うことは、私たち中小企業経営者は、新しい時代すなわち人口減少社会の到来をビジネスチャンスと捉えて、商品や新市場を開発・開拓することに努力しなければならないということです。そしてそのことが地域の成熟した文化の形成に貢献し、地域の発展と日本の再生につながる道であると思いました。
人口減少時代だからこそ「いい商品」、「いいサービス」、「いい技術」が磨かれるのであり、その担い手の重要な部分は私たちの中小企業が担わなければならないのです。みなさん、頑張りましょう!
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