「サラリーマン増税」論議のゆくえ
今回の衆議院選挙は、郵政解散であったために、当初は税についての論戦が少なかったようですが、最近になって「サラリーマン増税」や「消費税の増税」が議論されるようになりました。でも、日本の財政事情がここまで追い込まれているのに、相変わらず思うのは、その場しのぎの粉飾公約がいかに多いのにはあきれてしまいます。
(龍前 篤司, 9/2)
衆議院選での「マドンナ刺客騒動」が一段落し、やっと税に関する問題が議論されるようになってきました。小泉首相の「私の任期中は、消費税は上げない」という無責任な姿勢は相変わらずですが、「サラリーマン増税」という議論についてはもっと冷静に分析してみる必要があります。
そもそも、この「サラリーマン増税」というのは、今年の6月21日付けで政府税制調査会から「個人所得税に関する論点整理」という所得税改革の方向性に関する提言が発表されたところ、この提言が給与所得控除や退職所得の課税強化などを提言しているために名づけられたものです。
世界でダントツの借金まみれになってしまったわが国の国家財政を健全化するためには、増税論議は避けて通ることはできないのですが、その中でも所得税と消費税をどうするかは日本が抱える最大の今日的な課題です。多くの政党が、この点をあいまいにしているのは残念ですが、今後の4年間こそ‘この日本が沈没するか否かが決定するといっても過言ではない重要な時期なのです。
さて、所得税の問題を考えて見ましょう。日本の所得税はバブル経済崩壊以降の景気対策と称して減税を重ね続け、昭和60年代には60%(地方税を合わせると78%)であった所得税の最高税率は平成11年には37%(地方税を合わせると50%)まで引き下げられ、課税最低限も夫婦と子2人で384万という高い水準になりました。国際的に割高であった日本の所得税は他の先進諸国並みに引き下げられたのです。
それに対してわが国の消費税は5%という率は国際水準から比較すると極端に低い水準です(北欧諸国25%、フランス19.6%、イギリス17.5%、ドイツ16%、日本より低い税率はシンガポール4%だけである。)。
つまり、世界で一番の借金国である日本が、世界で一番低い税率の消費税を採用して、40兆の税収に対して80兆の歳出を続けているわけですから、消費税の増税は財政の健全化のためには「必要なこと」なのです。
多くの賢明な経済人は「消費税の税率をアップしなければならない」ことを理解しています。どんなに「小さな政府」を実現しようとも、消費税の増税を避けて財政の健全化は不可能だからです。
したがって、「所得課税から消費課税に」その中心軸がシフトしていくことは避けられないのですが、問題なのはその時の所得税のあり方なのです。
政府税制調査会が提言している「サラリーマン増税」の問題点は、‘給与所得者に対して特別な斟酌を行う必要性は乏しくなっている’として給与所得控除を縮小しようとしているところにあります。今回の提言は、所得区分の見直しという観点から、各所得ごとに根拠の薄い優遇を削減する内容になっています。その理屈から提言されているものを例示すると
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給与所得控除は、その金額に根拠がないので縮小する、経費がもっとあるというなら実額控除を認めますから確定申告してください。 |
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退職所得について、永く勤めた人を優遇するのは、転職する人に比べると不公平で根拠が薄いので退職所得についての課税方法を見直す。 |
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一時所得を1/2課税するのは根拠が薄いので廃止する。 |
| (4) |
ゴルフ会員権等の譲渡所得について損益通算を認めると「租税回避」に利用されるので、土地などの譲渡所得と同じく損益通算を認めない。 |
等の方向で改正することを検討しているのです。
どうも世知辛い所得税を目指しているような気がします。消費税や社会保険料で負担が増加していくサラリーマンには、根拠が薄くても給与所得者控除はある程度認められてもいいし、永く勤めたサラリーマンの退職所得が優遇されてもいいと思うのです。
逆進性の強い消費税の課税強化が避けられない以上、所得税の増税は資産性所得に対する強化や累進性の強化によらないとバランスが取れないと思うのです。消費税の増税と所得税改革はセットでなければならないのであり、「私の任期中は、消費税は上げない」というのでは、所得税の改革さえできないというべきなのです。
今後の4年間の基本的な方向性を決定する重要な選挙であるにもかかわらず、「増税がタブー」であってはならないと思います。
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