同族法人の社長給与に重課税!?

平成18年の税制改正については、従来の減税路線から増税路線に大きく転換し、定率減税の意廃止やIT減税の縮小など増税色の強いものとなっていますが、それ以上にサプライズな改正内容が含まれています。それは「同族会社の社長報酬重課制度」ともいうべき課税が盛り込まれていることです。

(龍前 篤司, 1/14)

今年の税制改正については、昨年12月15日に税制改正大綱が発表され、その大綱を受けて間もなく改正案が国会に上程され、3月末には例年その案どおりに成立する予定です。
今年の税制改正は、小泉首相が9月までに任期であり、それ以降本格的な消費税の増税論議をしなければならない都合上、
@消費税を増税するための環境づくり
A深刻な財政赤字からの1日も早く脱却し、再建するための目鼻をつける
B商法の大改正との整合性を確保しなければならない
という位置づけを持っています。
したがって、今まで財政が苦しいながらも減税を先行していた減税基調から明確に増税基調へと転換していることが大きな特徴です。

しかし、それ以上に特徴的なことは、大衆課税である消費税増税への環境整備という要請からの改正です。なかでも、「同族会社の社長給与を重課」する改正案が含まれていることはサプライズです。
この内容について簡単に説明すると、会社の株式の90%以上を社長およびその同族が所有している会社で、社長の給与と会社の所得の合計が800万を超えている場合には、社長がもらった給与のうちの一部(給与所得者控除相当額)に法人税を課税するという改正内容です。

同族会社のほとんどは社長一族が90%以上の株式を所有している会社であり、その中で「会社の所得と社長給与の合計額が800万以上の会社」というのは、「きちんと経営できている中小企業」の大部分になります。
このきちんと経営できている中小企業の社長の報酬について「一部損金と認めずに法人税を課税する」というのが今回の改正なのです。
日本にある300万社のほとんどが中小企業であり、そのほとんどが同族会社であり、その中できちんと経営できている会社に対して大きな増税を行おうとするものであり、ひどく乱暴な改正だと思います。

そしてその一方で、非同族会社については、会社の役員に支払われる賞与が、事前にその算定方式と支払い時期が決まっていれば損金として認めるという改正も提案されています。すなわち、上場企業等の役員に対しては従来損金として認めていなかった賞与についての損金性を認める一方、同族会社に対しては役員賞与の損金性を認めないばかりか、「800万以上の給与をもらえば重課する」とでもいうべき改正内容なのです。

この、非同族会社(多くは大企業)の役員報酬に対しては優遇し、同族会社(多くは中小零細企業)の社長報酬について重課するという改正が、突然提案され、あまり議論されないまま成立しようとしているのです。
 
もうひとつサプライズな改正があります。1人当たり5000円以内の飲食費は交際費とせずに、損金として認めましょうという改正です。資本金1億円以下の中小企業には一定額の交際費は損金性が認められていましたが、大企業の交際費は損金不算入とされていました。したがって、「一人5000円以内の飲食費は交際費として取り扱われない」ということになれば、大企業にとってはたいへん大きな減税となります。

以上のように、平成18年の税制改正がこのまま成立するとどんな世の中が実現するのでしょうか。大企業では役員賞与が損金となりますので、役員報酬が大幅に増額され、大金持ちの会社役員が大勢出現し、大企業では従来経費にならなかった飲食費が経費となるため、銀座は大企業の社交族で賑わうという状況が目に浮かびます。 そして、その一方で、必死になって頑張って家族総動員で働いている同族会社の社長は800万以上給与をもらってはならないというのです。

このような改正が何の議論もされずに、マスコミで大きく取り上げられることもなしに成立しようとしています。税の専門誌でさえ、この改正について「影響を受けるのは5万者程度」という当局の発表を垂れ流していますが、影響はそんな程度でないことは明らかです。
現在の景気回復が外需頼みであり、大企業中心なのですから、頑張っている中小企業の社長の意欲を削ぐような改正を行うのは疑問であり、必死になって税収を確保しようとしているのですから、大企業の役員賞与を優遇することや交際費を優遇することは、財政再建の目鼻が立ってからでも遅くないはずです。
 
どうやらこの国は「一握りの勝ち組」と「這い上がれない未来を抱えた負け組」の2極化の道へ突き進もうとしているようです。日本がこのような階級社会になったら、この国の本当のパワーが萎んでしまうような気がします。それとも、一度はそのような荒治療が必要なのでしょうか?

今年の税制改正につきましては、1月26日(木)にソニックシティビル9階で、午後1時よりセミナーを開催しますが、そこでこの対応策についてお話したいと思います。


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