| 〜新会社法の施行に便乗した役員報酬課税強化の疑問点〜 |
| 平成18年7月10日 |
| 役員賞与の届出は慎重に、異なる支給は役員報酬全部が損金不算入に |
(1)「特殊支配同族法人」への課税強化
平成18年の税制改正の中で中小企業経営者にとって最も衝撃的な改正は、なんと言っても特殊支配同族会社の役員報酬に対する課税強化策です。このことについては何回もFAXニュース等でお知らせしていますが、簡単に言えば90%以上の株式を同族で支配している場合に社長(主宰する役員)の給与の一部(給与所得控除分)を損金不算入にするという改正です。
この改正の立法趣旨は商法改正により、会社が設立しやすくなるので、「実質的に個人事業と同じ会社」に対して課税し、法人設立による節税を封じようとするものであるとの説明がなされていました。当初、この改正により影響を受ける中小企業はおよそ5%程度であるという根拠のない説明がなされていましたが、実際はそれなりに利益をあげている中小企業の大部分がこの課税強化の餌食となってしまいます。私の予想では、たぶん1/4程度の中小企業が「特殊支配同族法人」として課税強化されることになると思います。
(2)『特殊支配同族法人』の運用は厳しい?
現在の日本では急速に進行する少子高齢化の影響もあって、廃業する法人が増え、新規に設立する法人が減少しています。今回の商法改正の目的はグローバル化への対応と共にベンチャー支援なのですが、この「特殊支配同族法人」の新税制は“節税のための法人設立を抑制する”ことを目的にしているのですから商法改正の目的に逆行しています。しかも、このように個人事業と変わらない1人法人による課税回避を防ぐために創設された制度であれば、目に余る節税に限って抑制的に適用されるべきなのですが、国税当局はかなり厳しい運用を行うことを明らかにしています。
例えば「社員持ち株会」に自社の株を10%超所有させて、この特殊支配同族法人の課税を回避しようとしても、議決権の行使が制限される社員持ち株会では“業務を主宰する役員と同一の議決権の行使が約束されている”として他人所有と認めない可能性があるというのです。
しかも、これから株式を譲渡して同族が所有する割合を減少させようとしても“株式を譲渡する理由がこの課税を回避するためでないかどうかチェックする”なんてコメントが税務の専門誌に載っているのですからあきれてしまいます。もし「譲渡する理由が問題だ」というのであれば、誰に譲渡しても「心の問題」で税務当局から難癖をつけられることになってしまいます。法律で明確に90%以上の株式を主宰する役員及びその同族で所有している場合と明確に規定しているのですから、その判断基準は内心ではなく客観的な基準で判断するべきです。
(3)届出通りの支給をしないと全額不算入!
同じような問題が、「役員賞与課税」でも起こっています。会社法は役員賞与を企業会計上は利益処分ではなく期間費用としました。すなわち、役員に支払う報酬は利益を獲得するためのコストであり、最終的な利益は役員に配分するべきものではないというグローバルスタンダードによる発想の転換をしたわけです。
税務はこれを受けて、役員賞与の損金算入に道を開いたわけですが、その条件として@事前に支給額と支給時期を確定すること、A職務執行開始前又は期首から3ヶ月を経過する日のどちらか早い日までに税務署へ届出を出す、というとても厳しい要件を要求しています。
しかも、その届出をした場合は、届出どおりの支給をしないと全てが損金不算入になるし、従来の増額改定時の遡り支給も認めないこととされました。「事前(職務開始前)に全てが確定している」ことと届出通りの支給が損金算入の条件だというのです。経営者のやる気を削ぐ厳しい税務の運用は、自由な経営による活性化を狙った商法改正の目的と乖離しているのではないでしょうか。
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