〜新会社法の施行により、
決算公告しないと罰則の適用はあるか?〜 |
| 平成18年7月18日 |
| 決算内容の安易な公告は危険であり、その影響を考えて慎重に |
1.新会社法により決算公告は必要に?
今度の会社法は最低資本金制度や商号規制等の規制を大幅に緩和したばかりか、取締役等の機関や株主総会の招集手続きや株式について大幅に規制緩和しています。その結果、取締役は1人でもいいし、取締役会や監査役は設置する必要なく、資本金は0円でも良いということになりました。
したがって、従来中小企業が遵守することが困難であった会社法制が、「中小企業でも守ることが可能になった」といわれています。ただし、不思議なことに決算公告については、今度の会社法でも特例有限会社以外はどんな小さい株式会社であっても従来と同じく公告することが義務づけられています。従来から中小企業では殆ど守られていなかった決算公告について、なぜ実態に合わせた規制緩和がなされなかったのでしょうか?
その理由は、最低資本金制度や取締役会の設置等の規制を緩和する代わりに、中小企業にも財務の実態を公告することを要求して取引の安全を図ろうとするものであるといわれています。
だとすれば、従来は中小企業に適用されることのなかった「決算公告」をしなかったことによる罰則規定の適用が、会社法の施行によって適用されるようになる可能性があるのではないでしょうか?ちなみに会社法第976条によると「この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき」には取締役は100万円以下の過料に処せられることと規定されています。
2.決算公告は非公開会社にとって必要なのか?
そもそも開示制度(デスクロージャー)の強化は株式を譲渡することが認められている公開会社であれば必要ですが、株式の譲渡制限をしている中小企業は、株主も会社債権者も容易に会社の業務内容を把握することができるため、あまり必要ではないといわれています。
それではなぜ、会社法は非公開会社も含めて、全ての株式会社について計算書類の公告を要求しているのでしょうか?
3.会社法はアメリカ資本上陸のために用意された?
筑波大学大学院教授の大野正道氏は税務雑誌「税と経営」のなかで、「本来企業法制は各国独自のものであり得るというのが、長い間、国際的に認められてきたルールである」といっています。そして今回の商法改正は、平成2年6月28日に日米間で合意された「日米構造問題協議最終報告・日本側措置」で会社法の見直しを約束させられ、アメリカ資本が上陸するために用意された側面が強いというのです。大野氏はこのことを称して「明治維新、第二次世界大戦に次ぎアメリカに3度目の敗北を喫した」といっています。
そして、会社法が決算公告を怠った場合に取締役に課している100万円以下の過料という制裁は、「現在では完全に有名無実化しており、今後も発動されるとは思えない」としています。
4.決算公告の選択とその留意点
さて、以上の議論から私たちはこの決算公告についてどのような対応をしたらいいのでしょうか?まず、会社法上の義務だからといって、なんら自社にとってメリットのない決算公告は安易にすべきではありません。それに対して公告をすることによって取引先に安心してもらい、社会的な信用力が高まるのであれば決算公告を積極的に考えるべきです。
決算公告の方法には2つの方法があり、官報や日刊新聞による場合と、電磁的方法すなわちホームページ上で公開する方法があり、定款の規定で選択することになります。官報等による場合は費用がかかりますが、公告するのは貸借対照表の要旨でだけいいことになっています。ホームページに載せて公告する場合は費用がかかりませんが、要旨でなく貸借対照表の全部を載せる必要があります(大企業は損益計算書も公告しなければなりません)。
決算公告することによって、取引先に不安感を与えたり、広告宣伝の対象にされたりという影響も考えておかなければなりません。特に今年からは税務署から高額納税者の公示制度がなくなったため、この公示される貸借対照表が商業主義的に利用される惧れも、考えておかなくてはなりません。建前としてのデスクローズは重要なことですが、私たち中小企業は様々な影響を十分吟味して選択すべきだと思います。
ただし、中小企業もきちんとデスクローズしなければならない時代が到来しつつあることは事実であり、公告できるよう財務体質を強化改善することはとても重大な課題であることはもちろんです。この決算公告制度がどのように運用されるのか注目されます。
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