| 〜税務調査が厳格化してきている?!〜 |
| 平成19年3月13日 |
| 些細な不正も許さない最近の風潮はなにをもたらすか? |
1.農業所得の課税強化の意味!
平成18年分の確定申告も終盤にさしかかり、わが事務所も連日遅くまで残業しながら格闘しています。関係者の皆様には多大なるご協力をいただき、お蔭様でなんとか無事に確定申告を済ませそうです。まことにありがとうございます。この紙面を借りて深く感謝申し上げます。
さて、今年の確定申告の最も特徴的なことは、今年の申告から農業所得が収支計算となったことです。農業所得といえば昔から「9、6、4(クロヨン)」とか「10、5、3(トーゴーサン)」といって、所得の補足率が低い代表といわれていました。歴史的に見れば農業者の所得については、地方自治体がその所得をお知らせする「農業所得標準方式」が永く続いていました。その後、耕作面積により収入を計算して申告する「収入目安方式」がしばらく続いた後、最近は収入を実額で申告させ経費は目安割合を使って所得計算する「経費目安割合方式」により農業所得の計算をさせていました。それが平成18年分の農業所得からは、「収入も支出も実額で」計算しなければならなくなったわけです。
実際に市場等に出荷している農家であれば、実額で計算するのもわかるのですが、家事消費するだけの農家でも実額で計算しなければならないというのですから、「農産物の種類ごとの生産高を記帳」しないと厳密には計算できないのです。
税務当局はこのような零細な農家についてまで、課税強化しようとし、税務調査での指摘もかなり細かくなってきています。税務調査の運用が厳しくなって、他の事業者の課税も強化されているようです。
2.管理料10%でも否認した裁決例の意味
先日のFAXニュースでお知らせしたとおり、今年の1月末に公表された国税不服審判所の裁決例によれば、不動産所得者が節税目的で同族法人に管理料を支払ったとしても、その同族法人が介在する必要性がなくかつ何も管理行為をしていないとしたら、僅か10%の管理料さえ、必要経費に認めないというのです。
管理法人については、長年にわたって「暗黙の常識」があって、“20%までに管理料なら否認されない”と言われていました。確かに介在させる必要のない同族法人を介在させ、必要性のない管理料を支払ったとしても理屈としては「必要経費にならない」ということはわかります。また、「農業所得も正確に申告させるべきだ」ということも理屈としてはわかります。
しかし家事消費目的の農家や、資産経営の合理化のために同族法人を設立した不動産所得者まで、厳しい理屈で対応することはおおいに疑問です。厳しい農業所得課税は、農業経営を圧迫し、零細農家の農業離れを加速させ農地の荒廃を招きかねません。資産管理法人への課税強化は、超高齢化社会の到来と相まって資産経営の早期承継や合理化に棹差すことになるでしょう。
なぜこのように税務執行面での課税が強化されているのでしょうか?最近の税務調査は「内部からのタレコミ」によるものが増えているといわれています。マスコミが連日政治家や公務員の従来は問題にされなかった問題をたいへん大きな事として報道しているように、今はまさに「些細なことに目くじらを立てる時代」が到来しています。
最近の税制改正においても、「消費税の免税点の引下げ」や「特殊支配同族法人を主宰者へ支払った給与の一部損金不算入」等、毎年のように同族法人や小規模事業者への課税強化の試みがなされています。この傾向はこのような些細なことでも許さない最近の風潮に影響されているような気がします。
3.このような時代をどう生きるか
このように従来の義理や人情が優先される日本社会であれば、「法律の規定よりも暗黙の了解が優先」されるのですが、これからはグローバル化の進展も相まって、ますます「義理人情よりも明文規定が優先」され、法律を駆使するものと法律に翻弄されるものの格差は拡大するようになるでしょう。そうなると、「この程度なら大目に見てくれるだろう」という甘えは敗北や大やけどの原因にもなりかねません。
昨年施行された新会社法も、「暗黙のルールよりも明文規定を守る」ことや、「守れない非現実的な建前規定よりも、守れる現実的ルール」を優先した改正になっています。新会社法の施行に伴い、税務の分野でもかなり厳格な順法が要求され、しかも前回案内した「デジタル化社会の到来」は、ルール違反者を正確に把握する役割を果たすことになります。
「明文規定よりも暗黙のルールが優先」という従来の社会から、「明文規定を守らない者は保護されない」社会が到来すると、経営や税務の分野で見直すべきことがかなりあるのではないでしょうか。
(文責 龍前篤司)
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