税務対策以外でも証拠・証明力を高めた経営が求められる時代
平成19年5月9日
税務対策のみでの節税策は時代遅れに?根拠が重要!

1.日本の所得税制度は前時代的!
所得税の取り扱いの中で、特に前時代的と感じられるのは、生計を一つにする親族の収入は原則的に事業主の収入とされ、生計を一つにしている家族が同じ事業を営んでいると、その家族の全員で得た所得が1人の事業主に集中されてしまうことです。
収入の面では、一つの事業である以上、事業主にすべての収入が帰属させるのは当然とも考えますが、問題は、家族に支払う給与や報酬です。所得税の世界では、生計を一つする家族に支払う給料や報酬は経費になりませんが反面、その家族の収入にもされません。
なんとなく筋が通っているとも思われますが、問題は、所得が多くなるほど税負担が増すことになる税率構成の影響です。
このように家族労働者への報酬給与を厳しく扱う理由として、過去の所得税の判例は、

@ 日本には家族に給与や報酬を支払う慣行が少ないこと。
A 個人の記帳制度が一般的になっていないこと。
B 家族に支払う給与には恣意性が働きやすい。
などを挙げています。
しかし、核家族化の進展や同居親子のライフスタイルが変化している現在、個人事業者でも二世帯住宅は当たり前になっていますし、同居していても台所は別、食事や入浴の時間も別となっている場合が多いのではないでしょうか。このような場合当然息子夫婦には、事業主から給与や報酬が支払われているはずですが、依然、生計が別であることを証明ができないと経費とは認められず、事業主に高い所得税を負担させる仕組みが原則になっているのです(ただし、青色申告をしている事業者が専従者給与として事前に承認された給与は経費になります)。

2.前近代的な所得税制には近代的経営革新で対抗
前近代的な所得税の仕組みは、証明力の不足を前提としていますので、逆に言えば記帳や取引記録などをしっかり行うことにより、証明力を高めた経営を行えば、主張が認められやすくなっているとも言えます。
かつては、法人を設立しさえすれば節税できると言われていました。しかし、昨今、特定同族会社の役員報酬の問題や、不動産管理料の問題など、法人を利用した節税に対する税務当局の対応が厳しくなっており、今後一層厳しくなると考えられます。
したがって、今後は、事業の規模や会社の規模の大小を問わずに、親族や役員関係者との取引については、第三者との取引以上に、その業務に従事した事実や貢献度を明らかにすることを含め、証拠証明を前提とした経営を心がける必要があります。特に昨今は「形式より中身、契約より信頼関係」という、従来の経営スタイルが通用しなくなり、「信頼関係より契約書、中身より法令遵守」という風潮になっています。

3.経営革新が果たす事業承継と相続対策
証拠や証明力を重視する経営は、単に家族や役員に対する給与や報酬を必要経費として認めるかどうかの問題だけでなく、事業承継や相続対策にとっても重要です。
例えば、贈与税の世界では所得税で必要経費として認められなかった給与や報酬であっても、その対価が勤務などの実態に沿った上で実際に支払われたものであれば、贈与とは認定されませんし、これにより蓄積された資産は、その家族のものと認められます。
しかし、当然これを裏付ける証拠は必要になりますので、家族の勤務の実態や従事事実、事業への貢献度などを記録するとともに、給与や報酬の支払・受領の事実も証明できるよう、毎月一定の日に銀行等の口座を通じて取引を行うことなども必要になります。
このように、事業経営の革新つまり事業と家族を含む家計の明確な区分を一層進め、生計の実態に一致させることが、所得税の面だけでなく、相続税、贈与税の節税(本当は当然のことですので節税ではないのかもしれませんが)につながるものと考えます。
これは、単に税金の面だけでなく、後継者が事業に主体的に関与した結果の収益を適正に分配することで、事業経営への問題意識とその解決能力を持たせることにつながるとともに、事業に関与した親族に正当な報酬を支払うことにより、結果的に資産移転が実現することになりますので、事業承継のみならず財産承継の一つとして捉えることも可能になります。
なお、生計を別にするとは、扶養扶助を否定するものではなく、明確に区分されたそれぞれの収入を基にした扶養扶助を行うことですので、独立した家族関係の中で運命共同体としての家族関係は維持するのは当然のことです。

4.不動産経営に求められる証明力
所得税を節税する方法として不動産管理法人の活用が行われていますが、管理の実態を備えることが管理法人として節税するための要件となります。単に形式的に管理を委託するだけでなく、法人として何らかの管理実態を証明することが求められています。
これは、個人の場合も同様で、不動産経営に従事している親族の従事実態や貢献度をいかに証明するかが節税のポイントになります。このようにこれからの経営は、これまで以上に証拠や証明力が求められる時代となってきていることに注意する必要があり、これが経営革新の第一歩となることに注意する必要があります。
(文責 橋本則彦)


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