期待できる事業承継税制の抜本的拡充!
平成19年7月5日
納税猶予制度ができると事業承継対策は全く変わる!

1.求められる中小企業の事業承継の円滑化
上場していない中小企業にとって、「事業承継」という課題は経営上の最大の難問であり、これをうまく乗り越えないことには発展することが出来ません。現実に年間27万社の廃業のうち、後継者が不在で廃業する中小企業は7万社にも及び、これに伴う雇用の喪失が毎年20万〜35万人に上ると推定されています。   
そして後継者が存在する場合であっても、売却できない自社株に相続税がかかるため、現経営者は廃業を検討したり、会社からのキャッシュアウトや、事業拡大を抑制したりすることになります。しかも、その自社株が民法の「均分相続」や「遺留分」の対象になるのですから、事業承継対策をしっかり行わない限り中小企業は存続できないわけです。   
しかし取引相場のない中小企業の株価評価は毎年のように改正され、大胆な事業承継対策は税務当局から目の敵にされてきました。このような現行税制のもとでは、中小企業経営者は上場を目指すかM&Aで売却することが出来ないのであれば、「苦労して発展させても意味がない」ことになりかねないのです。   
このような中小企業潰しともいえる事業承継税制は、より円滑に承継できる税制に一刻も早く改正されるべきなのです。

2.画期的な事業承継税制が実現する?
自由民主党の経済産業部会は去る6月19日に、「中小企業の事業承継円滑化に向けた提言(案)」を公表しました。この提言は今年2月から事業承継問題小委員会を設置して21回にも及ぶ議論を重ねて練り上げた案で、注目すべきは「非上場株式に係る相続税の減免措置の抜本拡充」です。ここでは、事業用資産に係る相続税の納税猶予制度など、画期的な事業承継税制が提案されていますが、この提言の内容は1,2年の間に実現する可能性が極めて強いものであるといわれています。   
この「事業用資産に係る相続税の納税猶予制度」の内容についてですが、事業を承継した者が事業を継続した場合には、相続税の納税を猶予し一定期間継続後(5年とか7年で議論されています)免除するというものであります。この制度は事業継続要件を前提とした事業用資産の大幅減額制度と組み合わせて議論されており、事業承継者の承継後の納税負担が、事業の継続・発展のために有意に減免されることを重視してスキームを検討しています。したがってこれが実現すると、事業承継者の事業承継にかかる税負担が、5年とか7年間事業継続や雇用の維持を要件として減免されるというのですから、たいへんな朗報であります。

3.相続法制の抜本的な改正も実現?
この提言は単に税制改正の提言に留まらず、遺留分などの相続法制の改正まで提案しているところが画期的です。相続法制についての提言を紹介すると

@ 生前に相続人全員の合意が得られる場合には、後継者への事業用財産の生前贈与や、分割合意について遺留分の行使を制限する相続紛争の未然防止策
A 相続発生後の遺留分減殺請求権の行使に対して、事業用資産に対しては一定期間その行使を制限し、分割による価格弁償を認めようとするもの
B 生前贈与財産への遺留分減殺請求権行使できる範囲の制限
C 撤回できない死因贈与契約や撤回が制限された公正証書遺言制度の創設

等が提言されています。
現在の事業承継者は相続税に苦しめられるだけでなく、現行民法の「均分相続」や「遺留分制度」も事業承継の大きな障碍となっています。これらの相続法制が実現すれば、これらの制度を使って「相続紛争の起こらない事業承継」を生前に実現することが容易になります。

4.「いい会社」を実現しましょう!
以上のように、今回の事業承継に関する提言が実現すれば、事業用財産にかかる事業承継者が負担する相続税が一定期間事業を継続することにより減免され、事業用資産にかかる相続紛争も生前に回避策を講じることが可能となります。   
そうなると、従来の事業承継対策で「利益を少なくすること」や内部留保を薄くして「純資産価額を減らすこと」等の会社の内容を悪くする株価対策は不要となる可能性があります。考えてみれば、中小企業経営者が苦労して会社を発展させると、相続税や相続紛争に苦しむ現行の相続制度こそ問題です。中小企業経営者が迷うことなく自分の会社を発展させることに専念してこそ、日本経済も発展するし、そこで働く従業員も未来に希望が持てるようになるのだと思います。   
この提言が実現すると、どんな中小企業経営者もひたすら自社の発展のために尽力し、事業承継者は承継後、一定期間事業や雇用を継続すれば税金が免除されるため必死に事業を継続発展させようとする。
その結果、その会社はとてもいい会社となり、毎年多額の法人税を納め、従業員の雇用も安定することになれば、財政や経済にもたいへんいい影響を与えることになります。事業承継新時代が到来する予感がします。

(文責 龍前篤司)


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