| 〜グローバルスタンダード経営にあえて逆らう!〜 |
| 平成20年5月7日 |
| 建設業と食料の危機の本格化に思うこと |
1.税制改正法案は成立したけれど・・・
平成20年の税制改正法案が、4月30日での衆議院の再議決により成立しました。これによって、今年度の予算執行の根拠たる歳入が確保されたわけですが、なんだか今年の税制改正は出端を挫かれたこともありますが、あまり力強さを感じることが出来ません。
今年の税制改正法案が成立したくらいでは、日本の財政に全く先が見えないことはもちろんなのですが、多くの中小企業の経営者も自分の会社の先行きが見えなくなっています。したがって、今回の税制改正における目玉である「事業承継税制(自社株の相続税について80%の納税猶予を認める制度)」が成立したところで、あまり活発に利用されるような状況ではないようです。
例えば、地方の雇用や景気を支え続けた建設土木業は、建設投資が平成3年のピーク時に比べれば4割以上減少しているにもかかわらず企業数が減少していないのですから、事業承継よりもその存続自体が問題となっています。実際に建設会社は平成3年には52万社であったのが平成11年には過去最高の60万社にもなりましたが、平成19年には全国で4000件を超える過去最高の倒産件数となっています。そして始まったばかりの建設資材の値上がりはこの傾向に拍車をかけることになるでしょう。
2.求められる「時代のニーズに合った商品」創り!
建設業界だけでなく、旅館・ホテル、医療法人、学校法人、商店街等、中小企業の主流であった様々な業界の多くの中小企業が、かなり以前からその存続を問われているのですが、その将来像を描くことが出来ずにいます。この背景には、時流や政治の無策等の外的要因が大きいのですが、そのような中でも、中小企業が存続し、地域の雇用を支え地域経済を活性化するために求められるのは、新しいニーズに対応するために経営そのものを見直すことです。
人口が減少する時代に突入し、高齢者が増加するのですから、従来の需要は低迷していきます。公共事業にも期待できないとすれば、同一商品、同一サービスの競争力が低下するのは当然のことです。特に地方経済の疲弊は深刻な状態となっていますが、そのような環境にあっても発展している中小企業は、モノマネではなく地元にある人と人との関係や自然環境という資源を生かしているようです。
東京のモノマネをして、田舎に同じようなマンションを建設してもかなり安い価格で提供しない限り、魅力ある商品にはなりません。便利な都会でなく、不便な田舎での建物を建設するのであれば、便利さに代わる、何らかの商品性が必要だからです。地域の資源を活かして、健康や人と人の関係や自然との共生がプラスされてこそ、差別化であり、必要とされる商品なのだと思います。
こんな時代だからこそ、時代が地域と中小企業に求める「商品創り」が必要なのです。
3.資源と食料を争奪する時代が到来?
国際的な資源の争奪合戦は、急激な資材の高騰を招いていますが、もう一方で世界の穀物供給が急激に減少しており、「食糧危機の時代」が到来しています。このような中で私たち日本人は、1960年まではほぼ8割の食糧を自給していたのですが、現在の食料自給率は39%という他国の先進諸国では考えられないほど低い状態で能天気に暮らしています。
この世界的な食糧不足は、「人口増加」、「異常気象」、「バイオ燃料」、「農薬・化学肥料の大量投与」、「土壌汚染」、「病原菌」等の複合的な原因によってもたらされているようですが、アメリカでさえ穀物の戦略的備蓄が2000年の半分程度まで減少しているというのですから、食料の供給を外国に頼っている日本はたいへん深刻な状態にあるといえます。「毒入り餃子事件」、「狂牛病」等、食の安全についての関心が高まっていますが、他国に全く頼っている状態では安心していられません。
日本はかつて農業国であったのであり、現在でも高度な農業技術を持っています。敗戦後の高度経済成長時代に農業は切り捨てられ、急速に工業化したため、農業に従事する人口は急激に減少しました。地方の有力な地主の後継者は、農業を捨てて、都会でサラリーマンになるか、地域に残った人も多くは農業以外の産業に従事しました。
自国の農家の育成や食料自給率よりも、アメリカの農産物を輸入することの方が、重大な政治課題であったために、日本の農業は衰退し、食料自給率は低下したのでした。
4.アメリカ流の経営は中小企業を救うのか?
日本の雇用の7割を支えている中小企業の経営が、かつての日本の農業と同じように、衰退してしまったとしたら日本の未来はどうなるのでしょうか?
多くの大企業は、国際的な経済戦争に勝ち抜くために、国際的な土俵で、共通のルールに従って、経営しています。現在のように国内の消費需要が低迷している状態では、日本の企業利益は、海外取引をしている大企業によって獲得されているのであり、国内市場だけを相手にしている企業は、市場が縮小する中で過当競争に巻き込まれています。
この激烈な価格競争の中で、多くの企業がアメリカ型の「成果主義」や「能力主義」を取り入れています。そして、この旧式なアメリカ型マネジメントは、目先の売上や利益を追求する企業風土を日本中に蔓延させました。その結果が老舗の賞味期限のごまかしや、鉄筋の少ない水で薄めたコンクリートマンションという現象をもたらしているのではないでしょうか?
利益を優先することは必要なことですが、コストカットによる価格競争で中小企業が最終的にハッピーになれるとは思えません。これからの中小企業は、国内の市場が縮小するなかで、本当に求められている商品やサービスを供給する役割を果たすべきであり、大切にすべきは不器用だけれどもしっかりとした仕事をする社員なのかもしれません。
(文責 龍前 篤司)
|