| 〜所得税と相続税の課税強化からの防衛が今後の課題!〜 |
| 平成19年11月29日 |
| 平成20年税制改正議論から垣間見る課税強化の方向性 |
1.政府税調の答申から何を読むか?
平成20年度の税制改正をめぐっては、衆参の自民党と民主党のねじれ現象も影響してか、大胆な改正にはならないとうわさされていますが、政府税制調査会は、今月「抜本的な税制改正に向けた基本的考え方」という答申を発表し、いよいよ税制改正論議が本格化しています。
この答申を読むと、確かに消費税の税率の引き上げ等必要性や法人税率の国際水準までの引き下げ、金融所得の一体課税等の方向性は示しているものの、その具体的な中身については殆ど触れられておらず、このような答申を前提にすると20年度の税制改正は気の抜けた改正になる可能性は否定できません。
しかし、具体的なことを書けない答申であるからこそ、抽象的なこれからの税制について述べられている点も多く、政府が今後どのような税制を目指しているかの本音が垣間見える答申となっています。
この答申は、
| (1) |
所得税の再分配機能を適切に発揮していくべきである。 |
| (2) |
相続税の資産再配分機能の回復を図っていくことが適当 |
ということが、強調されている答申であるといえます。
2.所得税の再配分機能を発揮させるとは?
政府税制調査会は、「わが国の個人所得課税は、全体として、諸外国に比べ負担水準が極めて低くなっており、その財源調達機能や所得再分配機能が低下して」と所得税の増税を強く匂わせています。そして所得税の財源調達機能や所得再分配機能は、グローバル化の進行に伴う所得格差の拡大、消費税の役割の増大化、地方への税源移譲に伴う地域格差の拡大等の理由によりその役割が重要になっていると言っているようです。
そしてその方向性としては、「納税者の大部分に5%又は10%という低い税率が適用される構造」を問題にし、所得再分配機能が適切に発揮されるよう税率や人的控除等の課税ベースのあり方を問題にしています。人的控除の具体的な議論としては、@配偶者控除が就労の中立性を阻害していることや、A特定扶養控除は子供の教育についての多様化を問題にしていることから改正される可能性があります。
また、@給与所得者控除の見直し、A事業所得の記帳義務の適正化、B退職所得の課税強化、C年金所得の課税の適正化、等に触れているため、かなり広範な分野で課税ベースが拡大される可能性があります。
3.
事業承継税制が改正の目玉だが・・・
平成20年度の税制改正の中で、最も注目されるのは「事業承継税制の大幅緩和」であり、中小企業経営者にとって最も気になるところです。しかし今回の答申では具体的なことはあまり触れておらず、反対に相続税の資産再分配機能を強化するということばかりが強調されています。この相続税の改正については、従来から基礎控除の見直しが検討事項として掲げられていましたが、平成20年度の税制改正では相続税の基礎控除が大幅に縮小される可能性があります。
というのも、今回の答申で「年間死亡者のうち相続税の課税が発生する割合が4%程度まで減少するなど、その資産再配分機能や財源調達機能が低下」していることを問題にしています。さらに「被相続人が生涯にわたり社会から受けた給付に対する負担を、死亡時に精算するという考え方に立てば、相続税は、遺産が相続されるときにその一部を社会に還元することによって、給付と負担の調整に貢献できる」として相続税に社会負担の精算という役割まで期待しているのです。
新聞紙上で、あれだけ大々的に「事業承継税制」を取り上げておきながら、今回の答申では事業承継税制は「相続税制全体の見直しの中でさらに検討する必要がある」ということですから、どうやら事業承継税制の大幅緩和は相続税の増税と一体となってしまうかもしれません。
4.その他の注目すべき事項
以上述べてきた他にも、注意すべきことは、
| (1) |
金融所得の一体化と有価証券税制
上場株式の譲渡や配当に対する軽減税制は、金融所得課税の一体化と絡めて、その期限到来とともに廃止すべき |
| (2) |
固定資産税
一部では依然として負担水準の低い土地が存在していることから引き続きその均衡化・適正化を促進すべき |
| (3) |
法人税
グローバル化の進展に伴い法人実効税率の更なる引き下げが求められている |
| (4) |
消費税
本来は、最も真剣に議論すべき消費税の増税が「消費税の税率構造については、高い税率水準の下で複数税率を採用しているヨーロッパ諸国の実態も参考にしつつ、引き続き検討を進めるべきである」と抽象論で逃げています。 |
5. 相続税の増税には要注意!
平成20年の税制改正は、巷で「たいした改正ではない」と噂されていますが、消費税の増税は先延ばしすればするほど、他の税目での課税が強く求められることになります。注意しなければならないのは、所得税や相続税でその財源確保機能や再分配機能の発揮が求められている点です。
特に相続税については、事業承継税制が大幅に緩和されたとしても、これによって減税される相続税以上に相続税の課税ベースは拡大されるかもしれません。相続税の「財源調達機能」と「資産再分配機能」の発揮が求められているということですから、平成20年度の税制改正は要注意です。
(文責 龍前 篤司)
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