| 〜景気後退の始まりの匂い、早めの資金繰りを!〜 |
| 平成19年12月7日 |
| 建設に続いて金融も引締めが始まった |
1.銀行の自己資本算定をより厳しく
12月4日の日経新聞によると、金融庁は銀行の自己資本の算定方法をより厳しくする検討に入ったと報道されています。今回の検討は価格変動リスクの高い証券化商品の保有額を銀行の中核自己資本の額から差し引く方向で自己資本の額を算定させようとするものです。これは米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題により、多くの欧米の金融機関が多額の損失を計上していることから、金融機関のリスク商品への投資を抑制するために導入が検討されている自己資本算定方式のようです。
思い返せば、1997年の山一證券や北海道拓殖銀行の経営破綻に始まった金融不安は、不良債権処理のための多額な公的資金の投入や大規模な金融機関の統廃合を経て、10年後の近年やっと落ち着いてきたばかりです。この算定方式を導入すると、サブプライムローンが含まれるようなリスクの高い商品に多額の投資をしている銀行の自己資本比率はかなり低下することになります。不良債権による場合と同じように、自己資本比率の低い金融機関の信頼性が低下することによる金融不安が再燃しないか心配されるところです。
2.景気が急速に減速しはじめている?
金融は経済にとって血液と同じですから、金融機関の破綻は日本経済に深刻な悪影響を及ぼすことはもちろんですが、建設業界にも急速に景気の減速感が拡大しています。というのも、今年の6月から施行されている改正建築基準法の確認手続きが厳格すぎて、住宅着工件数が著しく減少しているからです。また最近の原油や商品市場の価格は、そのコストを転嫁できない中小零細企業にとっては、限界的な水準まで高騰しています。好調であった輸出関連の製造業も、原油高や最近の円高の影響により急速にその収益性が劣化しつつあります。
このように「史上最長の好景気」といわれた今回の景気回復は、すでに青息吐息の状態にあります。考えてみれば、今回の史上最長の好景気も、円高や中国経済の驚異的な急成長よる需要拡大という外因的な要因に支えられていただけであり、内需拡大による自律的な景気回復とはいえないものだったのです。
また土地価格の上昇による資産デフレからの脱却も、一部都心での収益性の増進はあったものの、周辺地の地価の反転は超低金利の住宅ローンやJ−RIET等により、不動産に資金が集まるようになったことに起因して実力以上に上昇している地域も多いのが現実です。したがって、現在の異常なマンション分譲等のブームが一段落すれば、土地の勝ち負けがより明確となり、勝ち組から下落することになるといわれています。そして最近分譲されるマンションの契約率はかなり低下しているようです。
このように金融だけでなく、建設や不動産にまで景気減速の影が忍び寄ってきています。
3.思い出すバブル崩壊の引き金
今回の銀行への指導は、1990年3月に当時の大蔵省銀行局が、金融機関に向けて発信した「不動産関連融資の抑制について」という通達が、バブル崩壊の引き金を引いたことを思い起こさせます。この当時の大蔵省の指導は、あまりに不動産が過熱しすぎてから、強烈すぎる規制を行ったことに問題があり、もっと軟着陸を目指すべきだったといわれています。
その後の永く続いたデフレスパイラルは、ジャパンアズナンバーワンといわれた日本経済の国際的な地位を甚だしく低下させ、ピーター・F・ドラッカーが絶賛した日本企業の経営者の自信を喪失させました。正社員を雇用せず、パートや派遣社員による人件費の削減こそ経営であるかのように言われ、下請けは徹底的にコストカットの対象にされたことが、多くの中小企業を苦難に陥れました。
最近、中小企業に対する銀行の融資姿勢が再び慎重になっているという傾向があるようです。今回の金融庁の指導は、あくまで自己資本の算定方式についての指導であり、金融機関には意欲のある中小企業に対する融資を抑制しないよう望みたいものです。
4.景気の動向は中小企業の経営にとって重要
以上述べてきたように、どうやら日本は景気後退の入り口に立っているようです。このような時期に私たちは何を考えなければならないのか、景気後退による被害を最小限にとどめるためにはどんな手を打っておく必要があるのかについて考えてみましょう。
| (1) |
財務体質の改善
金融機関の融資姿勢がより慎重になるとすれば、中小企業の財務体質を改善することが最も重要な経営改善策となります。損益計算書よりも貸借対照表の方が重要視されます。これを改善するためには、遊休資産の売却や増資等によって、自己資本を増強しておくことが重要です。 |
| (2) |
早めの資金繰り
資金繰りはある程度ロングスパンで、考える必要があります。そのためには不良化する可能性のある債権の回収や下落する可能性のある資産の売却を急ぐ必要があります。また、不足が見込まれる資金については、融資も早めに申し込まなければなりません。 |
| (3) |
固定費の節減
「自社の強みをいかに効率的に発揮するか」ということが不況時代を生き抜くポイントになります。固定費を極力削減してスリムにしなければなりませんが、同時に自社の差別化商品を強化して強い経営にしなければなりません。
いずれにしても、不用意な投資等には慎重にすべき段階を迎えているようです。 |
(文責 龍前 篤司)
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